結婚前夜

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   宴会が始まり、ビール瓶を手に注ぎに来た忍が囁く。 「おめでとう。  でも、淡々と退屈で幸せな結婚生活が続くと、いつか破綻するよ」 「笑顔でなに言ってんですか……」  周りの手前、笑顔で返しながら、ビールを注がれる。 「そうだ、これ見てよ」  忍は、今撮ったばかりの写真をカメラの液晶モニターで見せてくれる。  全員で写った写真の左端に誰か居る。  制服姿の少女。  清香だ。  ちゃっかり入ってるな〜。  しかも、カメラ目線だし、と莉王は笑った。 「そうそう。  こんな顔だったよね」  もう結構忘れちゃってた……と忍はモニターの清香の姿をそっと人差し指で撫でていた。  その顔は忘れても、想い出は強く。  忍さん、本当に清香さんが好きだったんだろうな、と思い、莉王まで切なくなってきた。 「ん?」  モニターが小さくてよくわからないが、允と自分との間にも誰か居るような……。
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