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「顔に疵がついたお人形だもの。眼鏡かけようと太ろうと老けようと関係ないわ」
「笑ったら痛みませんか?」
「ちょっとね。あなたと会えて嬉しくて」
「たった7日ですよ。さあ、消毒します」
妹は、言うなれば義人。
年下で同じ女なのに、落ち着いていて賢くて、私にとって永遠の憧れだ。
「……!」
私は黙って妹の手当てを受けた。
消毒するたびに、いっそ死んでしまえたらと思う。
そして涙があふれる。
痛い。痛すぎる。
「明日の朝は、ご自分でやってください。隣にいますので」
「……っ」
お礼を言う余裕もない。
けれど、それをどうこう言う妹ではないのもわかっていた。
私は、頼れる妹に甘えている。
しっかりしなくては。
でも、父に眼鏡を許してもらえるようになったら、あれこれと妹の手を煩わせずに済むし、なにか役に立てるような事も覚えられるかもしれない。
「リーヴァ卿はお姉様を愛しています」
私が言い返せない時を狙って、妹は言った。
その話はしないで、とも言えない。声が出ない。
「きっと、ご自分が痛みを引き受けたいと願われるでしょう」
「……っ」
「大丈夫です。お姉様」
私は涙を零しながら、希望を抱きかけている自分に恐れを覚えた。
妹は、常に、正しい人。
素晴らしい人だ。
その妹がそう言うなら、それが真実ではないかと……思ってしまった。
そして、それは、その通りだった。
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