3 素晴らしい人

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「顔に疵がついたお人形だもの。眼鏡かけようと太ろうと老けようと関係ないわ」 「笑ったら痛みませんか?」 「ちょっとね。あなたと会えて嬉しくて」 「たった7日ですよ。さあ、消毒します」  妹は、言うなれば義人。  年下で同じ女なのに、落ち着いていて賢くて、私にとって永遠の憧れだ。 「……!」  私は黙って妹の手当てを受けた。  消毒するたびに、いっそ死んでしまえたらと思う。  そして涙があふれる。  痛い。痛すぎる。 「明日の朝は、ご自分でやってください。隣にいますので」 「……っ」  お礼を言う余裕もない。  けれど、それをどうこう言う妹ではないのもわかっていた。  私は、頼れる妹に甘えている。  しっかりしなくては。  でも、父に眼鏡を許してもらえるようになったら、あれこれと妹の手を煩わせずに済むし、なにか役に立てるような事も覚えられるかもしれない。 「リーヴァ卿はお姉様を愛しています」  私が言い返せない時を狙って、妹は言った。  その話はしないで、とも言えない。声が出ない。 「きっと、ご自分が痛みを引き受けたいと願われるでしょう」 「……っ」 「大丈夫です。お姉様」  私は涙を零しながら、希望を抱きかけている自分に恐れを覚えた。    妹は、常に、正しい人。  素晴らしい人だ。  その妹がそう言うなら、それが真実ではないかと……思ってしまった。  そして、それは、その通りだった。
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