1 私は子供を産む道具じゃない!

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1 私は子供を産む道具じゃない!

「ティアナ、安心して。懐妊しやすいように母上が初夜の手ほどきをしてくれるからね。君の姉上のようにならないよう、僕たちふたりできちんと面倒をみてあげるから、君はただ横になっているだけでいいよ」 「はい!?」  結婚初夜──をそろそろ迎えるだろうと思われた、夕食直後。  夫が穏やかな笑顔で言った言葉に、私は耳を疑った。  どうか、聞き間違いであってほしい。 「ひ、必要ないわ。あなたと私で、できるでしょう?」 「君の為を思っての事さ。そんなに気を遣わなくていいよ」  むしろ、気を遣ってほしいのはこっちよ。  王室ならまだしも、ここはマイヤー伯爵家。貴族である事に違いはないけれど、寝室は普通の夫婦のそれで充分のはず。 「出産は大仕事だ。君の姉上はきっと、あらゆるところで無理が重なって、お腹の子と一緒に力尽きてしまったのだろう。だから、君がそんな事にならないようにしよう。任せてくれ。後継ぎの事は母上の言う通りにやれば、間違いない」 「え? ……待って」  体が芯から冷える。  初夜のあれこれについて、義母から教えを乞えという話だとしても充分な衝撃なのだけれど、どうも夫の口ぶりからして、それだけではない。 「お義母様に、寝室にいてもらうって言うの?」 「ハハハッ。いてもらうもなにも、君は横になっているだけでいいと言ったろ? 小作りから出産まで、君の面倒は母上がきちんと見てくれる。安心おし、ティアナ」  待って。  やだ。 「……」  気持ち悪い。 「……私が、子供の出来にくい体かもしれなくてもいいと言ってくれたのは、そういう意味だったの……?」 「医者でも神様でもないからね。大丈夫、母上は僕以外にも5人産んだ。みんな健康だ。母上に任せれば、健康な後継ぎが産まれてくるよ」  そう言って、夫が私の額にキスをしようと顔を寄せて来た。  スッ……と。  避けてしまった。 「初めてというだけでも恐いだろうに、君の姉上がになってしまっては、君の恐怖は僕には計り知れない。でも、僕と母上がずっと傍にいてあげるから、君は安心して僕の胤を宿してくれればいいのだよ」  これを善意で言っているのだ、この笑顔は。     「……私、あなた以外の人がいるところでなんて、……その……」 「なに言ってるんだ。出産も大勢の手を借りるだろう? もう、ティアナは本当にねんねだね。可愛いよ。力を合わせて、子供を作ろう。僕と、君と、そして母上と。完璧な後継ぎを!」 「……」  ああ、吐きそう。
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