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「突然、済みません」
「いや、構わん。それよりも何を話せばいいのだ?」
ワタルと男の会話に俺等はどう話を膨らませるのか。
そもそも5分という短時間で、どこまで聞き出すのか先が見えなかった。
「失礼ですが、庭を通って思ったのですが、奥さんやお子さんは?」
ワタルが単刀直入に聞いているところを見ると、男はゲンタと同じ歳位か?
まだ男の顔を見ていない俺は、鞘に納まってる剣のツカを握りながら、出て行くタイミングを伺っていた。
「…5年前に、妻も息子も死んだ。自分が少しの間、留守にしてる間に。盗賊に殺されたんだ」
ワタルとリョウの息を飲む音が聞こえた気がした。
確かキースの家族の生活費や貯金を奪ったのも盗賊だったな…。
色々あって、結局アベに話をしに行けてなかったのを思い出した。
「息子はまだ5歳だった…。生きてれば10歳。丁度、日曜学校に通っていた筈だった」
男の言葉に、俺は段々と何故グラカンドを拉致したのか、答えが見えてきた。
「それは…申し訳ない事をお聞きしました…。ごめんなさい…」
「いや、自分の方こそ裁きを受ける立場だ。本物の息子は、もう何処にも居ないのに、未練がましく子供を連れ去ってしまったのだからな…。済まん…。そこに隠れている追手の方達。連れ去った子を返そう」
どうやら、隠れていたのがバレバレだった様だ。
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