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魔王がニヤニヤ俺を見下ろしながら、そう言った時だった。
「グォッ?!」
魔王に何が起きたのか、始め俺には解らなかった。
只、見上げると、目を見開いた魔王が俺の上に倒れてくる。
その後ろには、魔王の血で真っ赤に染まった刃物を持った腹のデカい女が、いつの間にやら居た。
痛みは無いんだろうが、驚きで気を失ったようだ。
俺は全裸にも構わず、ノソノソと魔王の下から這い出る。
「勇者様、今の内にお逃げ下さい。…夫のゲンタを宜しくお願いします」
どうやら、亡くなったゲンタの妻子のようだった。
「あんたは逃げなくて良いのか…?」
呼吸を整え、女に問うと、彼女は儚い笑みを浮かべた。
「私はもう三途の川を渡った者ですから…」
「サンキュー…ゲンタの奥さんよ」
俺は全裸のまま、魔王からフラフラと逃げ出した。
白い光の見える方へと…。
「気が付いた?!」
目を開けると、カスミが枕元で俺の左手を握り締めている。
「カスミ…?」
まだ掠れた声で愛しい名を呼ぶと、カスミは声をあげて泣き出した。
「カスミちゃん?!タモツ、死んじゃったの?!」
カスミの泣き声が聞こえたのか、ノックもせずに、リョウが俺等の寝室に入ってくる。
「…バーカ、勝手に殺すな」
どうやら、俺は現世に無事に帰れたらしい。
「タモツー!良かったあー!意識が無いから回復魔法も効かないしさぁ。どうしようかと思ったよう」
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