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俺は渋々、身支度を済ませる。
鎧を纏い、剣を鞘ごと腰に着け、兜を被って、盾を持った。
あー、ねみー。
「勇者様、おはよう御座います」
ワタルは杖を持ったまま、ニッコリと悪魔の尻尾が生えた笑みを浮かべる。
さっきまでは、鬼の様な形相で怒ってたクセによ。
ところが。
「うーん…ムニャムニャ…タモツ…」
今度は、リョウが俺の夢でも見てるかの様だ。
「タモツ…カジノ行ったら…ワタルくんに怒られ…ムニャムニャ…」
「カジノ?勇者様とあろうお方がカジノへ行ったんですか?」
ワタルからの氷点下の眼差し。
「誤解だ。リョウも勝手に人の夢、見てんじゃねー」
俺はベッドをゲシゲシ蹴るが、リョウは気持ち良さそうな寝息をたてたまま、起きる気配が無い。
「仕方有りませんね。ここは僕と勇者様2人で行きましょう。リョウくんも、お城の場所は知ってますし」
なんだ、この差は。
「俺の時と全然違うじゃねーかよ」
「勇者様は世界を背負っている分、厳しく接して頂きます」
あー、誰だ。
俺の事を勇者にした奴は。
…って、先代の勇者ゴンゾウの息子だからか。
「さ、行きますよ。勇者様」
「へいへい、わーったよ!」
俺はワタルに連れてかれる形で、王の待つ城へ向かった。
城門には兵士が2人、見張りをしている。
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