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アウトローな勇者
ここは城下町の宿屋だ。
俺、勇者タモツは、魔法使いワタルに揺り起こされた。
「勇者様、勇者様、起きてください!」
なんだよ、人が気持ち良く寝てるっつーのに。
俺は頭までスッポリ布団を被る。
「ん…後、5分…」
「その5分は、もう経ちました。勇者様、さっきと同じ事言ってもダメです!」
そんな事言ったってなぁ。
勇者も人の子、朝はどうも苦手だ。
「ワタルくん、僕に任せて」
僧侶リョウの声も聞こえてくる。
「リョウくん…?どう起こすんですか?」
「奥の手を使うよ!」
奥の手だろうが、手前の手だろうが、まだ起きるつもりは無い。
ところが。
「タモツの布団の中、暖かーい!」
よりにもよって、リョウは俺の布団の中に入ってきた。
リョウが入ってきたせいで、俺は寝ていた狭いシングルベッドから、押し落とされた。
全身にくる痛み。
「…ってー…何すんだ、リョウ!」
布団の外から怒った俺は抗議の声を出すが、ワタルに杖の先端を突き付けられる。
「今日は王様にお会いする日じゃ有りませんか!早く起きてください!勇者が朝寝坊なんて聞いた事も有りませんよ!」
やれやれ。
勇者なんざなりたくてなった訳じゃねーのによ。
だが、王の呼び出しをすっぽかしたら、どんな目に遭わされるか。
それに何より目の前で怒ったワタルは、恐ろしい。
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