アウトローな勇者

1/2
前へ
/121ページ
次へ

アウトローな勇者

ここは城下町の宿屋だ。 俺、勇者タモツは、魔法使いワタルに揺り起こされた。 「勇者様、勇者様、起きてください!」 なんだよ、人が気持ち良く寝てるっつーのに。 俺は頭までスッポリ布団を被る。 「ん…後、5分…」 「その5分は、もう経ちました。勇者様、さっきと同じ事言ってもダメです!」 そんな事言ったってなぁ。 勇者も人の子、朝はどうも苦手だ。 「ワタルくん、僕に任せて」 僧侶リョウの声も聞こえてくる。 「リョウくん…?どう起こすんですか?」 「奥の手を使うよ!」 奥の手だろうが、手前の手だろうが、まだ起きるつもりは無い。 ところが。 「タモツの布団の中、暖かーい!」 よりにもよって、リョウは俺の布団の中に入ってきた。 リョウが入ってきたせいで、俺は寝ていた狭いシングルベッドから、押し落とされた。 全身にくる痛み。 「…ってー…何すんだ、リョウ!」 布団の外から怒った俺は抗議の声を出すが、ワタルに杖の先端を突き付けられる。 「今日は王様にお会いする日じゃ有りませんか!早く起きてください!勇者が朝寝坊なんて聞いた事も有りませんよ!」 やれやれ。 勇者なんざなりたくてなった訳じゃねーのによ。 だが、王の呼び出しをすっぽかしたら、どんな目に遭わされるか。 それに何より目の前で怒ったワタルは、恐ろしい。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加