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白い髭の男性
雨と雨の合間で川は、枯れ果てていた。
川底に一羽のやせ細ったカラスがいて、
砂利の中で何かを探している。
「あのカラスは、何時もは川底に住んでいるんだけど、
水が干上がっちまったから戻れなくなったんだ。
残っている水たまりを探して戻ろうとしている」
背後から白い髭の初老そうで、
物知りな話し方の男性に声をかけられた。
水の中にカラス。
そんなことは、ありえない。
なんて返答したらいいか分からなくて
黙ってうつむく。
ただ単に川底に取り残されて
死んだ魚や新しく生えてきた草の実なんか
食べ物を探しているんだろう。
気がつくと男性は、いなくなっていた。
空の向こうは重めのグレーの雲が
遠くの山々の姿を隠し始め、
遠くで雷鳴が鳴り響いた。
頭上に雨がパラパラと落ちてきて、
カラスも飛び去っていく。
続
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