アベサダ女子高生

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 阿部定事件を御存知だろうか? 1936年(昭和11年)5月18日、当時、鰻料理店で仲居をしていた阿部定は、東京市(当時は都じゃなく市だった)荒川区尾久の待合で性交中に元々マゾヒストで自ら首を絞められることを望んだ愛人であり店主の石田吉蔵の望み通りにしたところ度が過ぎて吉蔵を扼殺してしまい、酷く愛していた所以から吉蔵と離れ離れになるのが耐え難かったので待合を出る前、吉蔵の衣服を身に付けた上、陰茎と睾丸を刃物で切り取って肌身離さずといった具合に持ち運んだ事件。  しかし、これよりもっとショッキングな事件が現代に起きた。援助交際中に異常に興奮した男にフェラチオを強制された女子高生が自分の頭を掴まれ喉の奥の奥までフル勃起した陰茎を押し込まれてしまったので苦しくて苦しくて堪らなくなり、息も出来なくなる位、苦しくなった時、この糞エロ変態親爺野郎とばかりにフル勃起した陰茎を噛み切ってしまったのだ。全く以て前代未聞の大珍事で、その時の形相の物凄さは筆舌に尽くしがたい。恐らく鬼女でも山姥でも魔女でもそんな顔はしないだろうというくらいな途轍もなくおどろおどろしい顔をしたに違いない。  それから女子高生はフル勃起した陰茎と夥しい血を火炎噴射して発射したミサイルみたいに吐き出してラブホテルの部屋から猛スピードで逃げ出した、その時の形相も物凄かったろうが、男はと言うと脳天を突き抜けるような激痛の為に追っかけること能わず、それより兎に角119番通報しようと電話をかけ、救急車で病院に搬送された後、手術を受けた。しかし縫い合わせて結合したものの性的機能は復活しなかった。おまけに児童買春罪で逮捕されてしまった。  女子高生も傷害罪で逮捕され、警察署で事情聴取、検察庁でも事情聴取を受けたが、仮令、刑事裁判になっても緊急避難の過剰避難に当たるとして刑は免除されるだろうから勾留の必要なしと判断され、家庭裁判所に送致された。で、件の女子高生、否、退学処分を受けた明美を担当することになった家裁調査官の亀頭は姓名が姓名だけに実際に明美を面接室に迎え入れ、初対面となった時、17歳とは言え、成熟し切った彼女の美しさを目の当たりにして股間にまるでミミズが這うようなむずむずする感覚を覚えた。  援助交際と言うと、何だか綺麗な言葉のように感じるが、汚らわしいことを綺麗な言葉を組み合わせて誤魔化すように表現しているのだからこの言葉を生み出した奴は、相当な綺麗事好きに違いないと思う鬼頭は、汚らわしいこととは無縁のような美しい明美を眼前にして意外の感と不思議の感に打たれ、まさか、この子が・・・と異様に興奮する自分をはっきり自覚した。で、話してみて非常に言葉巧みなのに驚いた。例えば、「私思うんです。もし遠隔操作で男性器を切断できるリモコンを持ってたら男にレイプされそうになった時、どんな女の人でもリモコン操作して切断するに違いないって。それと同じことを私はやったと言って間違いないんです。でも私、反省しています。どんな理由があるにせよ相手の男性を性的不能にしてしまったんですから。惨いことをしたと思います。」と言うのだ。  成程なあと鬼頭は感心もし、反省もしているようだから止むを得ずしたことで狂気の沙汰ではなかったと判断し、裁判官への報告書に保護観察にするのが妥当という旨を記し、審判でも承諾された。つまり明美は少年院行きを免れたのだ。  しかし、保護観察中に明美はまたも援助交際をした。彼女を相手にした男が逮捕されて明らかになったのだ。で、鬼頭は家庭裁判所に明美を呼び出し、絶対、援助交際をしてはならん!これは絶対、遵守せねばならんことだと指導した筈だがと強く主張すると、彼女はけろりとした儘、再び雄弁を揮った。 「私、手前味噌ですけど、見ての通り美人でしょ。だからどうしても美貌を武器にしてしまうの。すると男の人は必ず誘惑に負けてしまうんです。これは自然の摂理というもので逆らえないことです。逆に私が誘われることもありますけど、男の人があんまり哀願するものですから何だか可哀想になっちゃって、ついサービスしてあげたくなっちゃうんです。」とこんな調子だ。 「お金欲しさにエッチしたさにするんじゃないのかい?」と鬼頭がズバリ訊いても、「絶対違います!奉仕したい一心になるんです!」と然も可憐に健気に言い張る。「じゃあ、自分から誘う時は?」と鬼頭は一応訊いてみるが、矢張り、「奉仕したいからです。」と言うのだった。で、無駄とは思いつつ女の貞操の大切さを諭してみると、明美は驚くべきことにこう言った。 「今時、貞操なんて固いことを持ち出すなんて私、何だか感動しちゃって純粋に亀頭さんに奉仕したくなっちゃった。なので鬼頭さん、只でやらしてあげるからラブホに連れてって!」  鬼頭は魂消るやら呆れ返るやらで諦観し、ほんとに今度、援助交際したら鑑別所行きだぞと脅したが、私、もうすぐ18歳だから大丈夫と明美は平気で言うのだった。  彼女が帰宅後、鬼頭は正直言って惜しい気がした。そしてこの時程、家裁調査官というお堅い仕事に就いている自分をついてないと思ったことはなかった。  
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