また会えたけど

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友悟視点 「話したいことがあります」 二人は生徒の邪魔が入らないよう移動した。 小さい頃アメリカへ行った蒼良には馴染みが薄いかもしれないが、体育館裏、というヤツだ。 「新入生がこんなところにいていいのか?」 「はい。 今は蒼良先輩のことの方が大事なので」 そう言うと蒼良は何かを察したようだ。 「・・・昔のこと、思い出したのか?」 あの時のフラッシュバックで全てを思い出した。 事故の時の怪我が原因で当時の記憶が薄れていただけだった。 そう言うと蒼良はバツが悪そうな顔をする。 「あー・・・。 その、何だ。 あの時は」 「謝る言葉はいらないですよ」 「・・・は?」 「誰のせいでもない。 ただ僕が不注意に飛び出しただけです」 「いや、でも・・・」 拒否されたことに困惑していたが、すぐに我に返って言った。 「いや、駄目だ。 それでも謝らせてくれ。 もうその額の傷は治らないんだろ?」 「あぁ。 これですか?」 友悟は前髪をすくってみせた。 古傷とは言えかなり広範囲の傷跡に蒼良は顔を歪める。 「消えない傷を作ってしまうなんてことは・・・」 「僕はこの傷、カッコ良いので誇りに思っていますよ」 「・・・それ、本気で言ってる?」 その言葉に笑顔で頷いてみせた。 「はい! それにこの傷は昔、蒼良先輩と一緒にいたという真実にもなりますから」 「何だよそれ」 そう言いながら蒼良は呆れたように笑ってくれた。 ―――蒼良先輩が笑ってくれた・・・! ―――よかった、蒼良先輩の笑顔は昔と変わらない。 久々に再開し見たその笑顔は、昔と重なっているように思えた。 それがとても嬉しかった。 「物好きだな」 「いえ、そんなことないですよ」 だが嬉しい反面寂しい思いもした。 「・・・でももう、昔のような関係には戻れないですね」 「どうしてだ?」 「僕たちは高校生になってしまったんです。 ちゃんとした上下関係があるんですよ。 それは蒼良先輩が教えてくれたでしょう?」 「・・・」 「もうあの頃のようにタメ口で笑って気軽に話せません」 切なそうに笑ってみせると蒼良は言った。 「じゃあ、もう俺の隣には来ないのか?」 「・・・え?」 「俺は別にタメ口でも構わない。 俺は昔みたいな、友達のように親しい関係に戻りたいと思ってる」 「ッ・・・」 「友悟とは先輩後輩の関係にはなりたくない」 「・・・蒼良先輩」 久々に名前を呼んでくれたことを嬉しく感じた。 「まぁ、過去に犯した俺の過ちを赦してくれるならの話だけどな」 その言葉に友悟は笑って蒼良の隣に並んだ。 「許すも何も、蒼良は何も悪くないから!!」 無邪気に笑うと蒼良は昔のように頭を撫でてきた。 だが昔とは手付きが違い今は荒く、くしゃくしゃ、という擬音がぴったりだ。 そこに成長が感じられるし、改めて蒼良の柔軟剤のような懐かしい香りが漂ってきた。 「入学おめでとう。 本当に友悟は大きくて立派になったな」                                -END-
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