適当に描いた魔法陣なんですけど!?

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 と、思っていたのに……。 「起きてください――」  そんな声が聞こえた気がして、俺はぼんやりと目を覚ました。半覚醒の俺を、なにやら強い光が照らしている。もう朝なのか。そもそもカーテンを開けたまま寝たのだっただろうか。そんなことを思いながら、上体を起こす。するとそこには、 (は……?)  絶対にあるはずのない光景が、広がっていた。つまり、 (うそ、だろ……)  俺が適当に描いたはずの魔法陣が、色とりどりの燐光を辺りに飛散させながら、金色に光っていた(・・・・・・・・)。そして—— 「あなたが、シエロセンセイですか?」 「あ、はいそうですが……って……」 (誰ええぇえ――!?)  魔法陣の放つ光が逆光になって容姿は良く分からないが、俺と魔法陣との間に、何者かが横合いから姿を現した。  思わず返事をしてしまったが、俺は、いきなりの侵入者の登場に数舜遅れて腰を抜かし、慌てふためいた。 (ななな何か身を守るもの武器とかいやそもそも119番違う110番だいやでも刺されたりするかもだしやっぱり119番の方が!?)  そんな俺の様子に気づかず、侵入者は一人勝手に得心していた。 「やはりそうでしたか! これほどまでに高度な魔法陣、シエロセンセイ以外に描けるはずがないですからね……!」 (なに言ってんのこの人――!?  そしてそれ、適当に描いた魔法陣なんですけど!?)  いろんな意味で、恐怖。  俺はせめて、俺を殺す相手の顔くらい拝んでやろうと必死に壁際まで這いずって部屋の照明をつけた。そして俺の目に映ったのは、 「お初にお目にかかります。  私は、クリスタ王国近衛騎士団所属、ソード・スラッシュ・マスターソン。この度の召喚、恐悦至極に存じます。  つきましては、私と共に――  元の世界へ、お戻りください」  そう言って跪く、金の甲冑に身を包んだ、濃紺色の髪の〈女騎士〉だった。
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