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「……なんか変な感じが……」
「おはようライカ君。いや、君はどっちなんだ? 」
目覚めた「それ」に、ラピスは気さくに声を掛けた。
「どっちって……うわっ、なんですかこの体⁉︎ 死んだと思ったのに……」
「その声はライカ君だな。アンジュの方はどこ行ったんだい」
「は? アンジュ? 」
ライカと思しき人間は、ゆっくりと目を開いた。
全身には痛々しい縫い後が走っており、体も上手く動かせないようだ。辛うじて言葉は問題なく話せていたが、現状に一番戸惑っているのは本人だった。
「……また僕を噛んだんですか」
「そうだよ。私一人じゃ『群れ』に対抗できないからね」
ライカはそれを聞くと、呆れたように首を振った。
「僕を殺す気で攻撃していたのに」
「あぁそうともさ。ライカ・フィクトとしての君は、肉塊に食われて死んだ。今の君はアンジュと一体化した、別の人間じゃないかな? 」
ラピスはそう言うと、彼が横たわる台に腰掛けた。
「しかしアンジュの意識が見当たらないのは残念だな。ペタルデスみたいに二人分の意識が入るかなって思ったんだが……どうだい? 」
「どうだいって言われましてもね……」
そう話す彼の左右の目の色は違った。
右はライカの。左はアンジュの色だった。
「……自分の中に違う誰かがいる感じはします。よく分かりませんが」
「それだけ聞ければ十分さ。後は体を動かせるように頑張ろうじゃないか」
ラピスはライカの顔を覗き込む。
「私が噛んだ以上、君は私の子供みたいなものだ。これからも宜しくな」
彼女の瞳が怪しく金色に光った。
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