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そして夜が来た。
仮初ではない本物の月が街を照らし、静かな世界を作り上げる。
ある場所では二人の怪物が眠っていた。
一人は黒く美しい長髪を床に垂らし、小さく丸まるように。もう一人は無機質な台の上で、仰向けになって死んだかのように。
ある場所では虹色の獣が人間を探していた。
鼻をふんふんと鳴らし、空気の中から目当ての匂いを探そうとしている。
やがて一方向に首を向けると、満足したかのように舌なめずりした。
ある場所では四足の獣が目を光らせていた。
虹色の獣が駆け出したのを見ると、それは静かに後を追い始めた。
人々の足の間を擦り抜けながら、着実に距離を詰める獣。
しかし「それ」の存在に怯える人間は、誰一人としていなかった。
月は静かに街を見下ろしている。
怪物達は穏やかにそれぞれの夜を過ごしていた。
その安寧が、近いうちに崩れ去ることを心の中で察しながら。
ーー続くーー
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