― 最終章 ― 

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 暗闇のホール内、二人が耳にした声は明らかに赤の番人ジョゼフに憑りついた魔女の呪いの悪魔の声。 「グゥフィヒィヒッヒッ――、 まさかこの場で再会するとはな――、 和花、晴、神をも消せるあの書物を手にしながら、私欲を満たす事を放棄した愚かな人間どもめ」  晴は戸惑う和花を庇う様に背後に守る。 「ど、どうしてここに……」  晴は悪魔の声へと問いかける。 「グゥフィヒィヒッヒッ――、 笑わせるな、お前達の心が我をここへ呼び寄せた」 「私達の心……」 晴と和花はじっと見つめ合い、言葉を交わすことなく互いに何かを感じとっていた。 「グゥフィヒィヒッヒッ――、 Question(質問)? 貴様の脳腫瘍が消えた理由を知りたいかい?」 「……」 「答えは――、 俺様が退屈しのぎに綴ったのさ…… グゥフィヒィヒッヒッ――」 「一体どこに……」 「僕も和花も、全てのページを綴り終えた。『赤の書』、『青の書』に残されたページなどない筈……」 二人のために奴が綴った場所。  それは――、 『赤の書』に残された唯一白紙のページ。 「晴っ、あの黒太陽の呪わしき魔術絵の消されたページが白紙に!」  怒りと哀しみを秘めた二冊の書物、幾数千年重ねた歴史において初めて、晴と和花の二人は私利私欲を綴る事無く、人間の心の中に潜む相手を思いやる『愛ある書』として二冊の書を綴り終えた。    その書物の結末に対し、ジョゼフに憑りついた魔女の呪いの悪魔の化身は『人間の愛』を悟り最後に二人に敬意を称し晴の命を救う決断を下していた。 「どうして僕を……」 「あなたは、私も、晴の事も殺そうと恨んでいた筈――、それなのに何故」  そして、魔女の呪い悪魔の化身は、二人へ意外な言葉を残す。 「汚れなき人間が現れし時、我が身滅びる運命なり――」  魔女の老婆はいつか訪れるであろうその時を信じ、呪いを消す呪文を隠し魔術として唱えていた。 「グゥフィヒィヒッヒッ――、 Question(質問)? これで満足かい? 答えは――、 グゥフィヒィヒッヒッ――」 ― END ― 長編作品にも関わらず完読頂き、 「ありがとうございました」 心より、お礼申し上げます。 もう一回、 「ありがとう。。。ペコリ」 井之上 光
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