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私がそんなことを考えている間に、王宮の侍従が手際よくお菓子を並べてくれる。美味しそうなクッキーをはじめとした焼き菓子のほか、ケーキなども取り揃えられている。お茶も数多くの種類を用意してくれているらしく、とてもではないけれど二人分だとは思えない。
「どうぞ、食べてくださいね」
茫然とする私に、ノア様はそう声をかけてくださる。だから、私は一番近くにあったパウンドケーキをお皿に取り、そのまま口に運ぶ。そのパウンドケーキは、ドライフルーツが良い味を出しており、とても美味だ。焼き加減もちょうどいい。どうやったら、こんなにも美味しく焼けるのだろうか? そう思いながら、私はパウンドケーキを頬張る。
「お茶はどうしますか? いろんな茶葉を取り揃えてみたんですけれど……」
「……私、あまりお茶に詳しくないのでお勧めでお願いします」
「分かりました。では、俺が一番好きなものにします」
私の返答を聞いたノア様は、手際よくお茶を淹れてくださる。……って、いやいや! 王子様であるノア様にお茶を淹れさせてはダメでしょう! そう思って私が自分で淹れると伝えたのだけれど、ノア様はそれをやんわりと断られる。そして「俺、こういうの好きなので」とだけおっしゃった。そして、お茶がカップにを注がれる。湯気が上がっており、とてもいい香りがする。
「俺、茶葉とか集めるのも好きなんですよ。ですから、これは俺のコレクションの一部みたいなものです」
そうおっしゃったノア様に勧められ、私はカップを口に運ぶ。そのお茶は、初めて飲むような味だった。でも、美味しい。正直に言えば、銘柄なんて一切わからないし、茶葉の種類も分からない。ただ分かるのは、これがお高いものであり、美味しいということくらいだろうか。
「お茶は淹れ方によって活かすことも殺すことも出来ますからね~。俺、お茶を淹れるのが好きで、よく自分で淹れているんですよ」
「……そうなのですか。私、そう言うのはさっぱりで」
「まぁ、こういうことは好き嫌いの激しいことですからね。貴族の中には、こういうことを『侍従の真似事』と言って毛嫌いする人もいますから」
ノア様は、何でもない風にそうおっしゃるとカップを口に運ばれる。……侍従の、真似事。そう言えば、お茶を淹れるのは基本的には侍従の役割だったっけ。そう思いながら、私は茫然とお茶を飲む。……ノア様と一緒にいるのに、集中できていないのは間違いなく失礼だ。分かっている。分かっているのだけれど……やはり、昨日のハイデン様のことが頭をよぎってしまう。
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