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「……それで、だな。お前の爺さんと婆さんから、頼まれちまってな。……お前を、貸してくれって」
「は、はいぃぃ?」
貸せ? それってどういう意味? もしかして、援助してくれとかそういうこと? でも、私の給金じゃあそこまでの助けにはならない気が……。
「サマンサは女官だから知っているだろうが、王子の妃を選ぶ後宮があるだろう?」
「え、えぇ、そうね」
「そこで問題を起こさずに、一年間妃候補としてお勤めを果たせば、実家には多大なる金が入るんだ」
「……そう」
この流れ。まさか、まさかだけれど……!
「だからな、お前の爺さんと婆さんはお前に後宮に言って、妃候補として一年間お勤めを果たしてきてほしいと言っているんだ」
やっぱり、そういうことなのね……! そう思って、私は物理的に頭を抱えてしまった。
だって、後宮って女官として仕える分に関してはまだ、まだまし。だけど……実際に妃候補としていくとなれば話は全くの別物になる。だって、あそこって――。
(女の嫉妬と陰謀と欲望が渦巻く地獄のような場所じゃない!)
私は女官としてあそこの近くで働いていたから、分かる。あそこは――嫉妬と欲望と陰謀という名の魔物が住まう、この世の地獄なのだ。
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