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友海に会うことはそれ程難しいことではない。
会おうと思う気持ちひとつさえあれば会える距離にいた。
サンダルを引っ掛けると、そのまま友海の家のインターホンを鳴らした。こんなことをするのは、何年ぶりだろうか。
友達ではない友海に出会うのは記憶の中に無かった。もうすでに忘れられている絵が頭をよぎる。その時間が息苦しくて、息詰まる。額から汗が目頭を伝う。
長い時間がたった気がした。
黄色い壁の家に付いている重い戸が開くと、そこにいたのは、小学生くらい女の子が出てきた。
古谷は焦った。
その女の子は、古谷を見ると戸を半開きに抑えたままの状態で家の中に顔を向けた。
「ね〜、俊くんじゃないよ。
お兄さんだった。」
彼女が母親に言った俊くん…
古谷俊…間違いなく自分の名前のことであることが分かった。
そして、彼女は間違いなく小菅友海だった。
気がつくと、古谷は自分の家に無我夢中で走っていた。玄関の戸を開けると、そこは真っ暗だった。
遠くから、トントントンとリズミカルな音が聞こえてくる。
気がつくと、古谷はリビングにいた。つけたはずのないテレビがついていて外の様子を見るともう夕方になっていた。
夕ご飯を作っていた母親が、古谷が起きたことに気づいたのか呆れ顔をした。
ずっと、寝ていたのか…
妹を玄関で送るところまでは覚えている。
このままでは彼女にもう会えないような気がした。友達欄から一度消えた時点で会えないように仕組まれている気がした。
「ちょっと、散歩行ってくる。」
「ご飯は、30分くらいでできるからそれまでには戻ってくるのよ。」
サンダルを突っ掛けると、今朝も行ったはずの黄色い壁の家に向かった。
インターホンを押そうかとも思ったが、それをすることは、、できそうに無かった。
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