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「あ、今日久しぶりに友海ちゃんのお母さんと会ったんだけど、友海ちゃん今海外遊学してるらしいわよ。」
夕食中に母親が、古谷の心の持ち様とは正反対の快活さでそんなことを言った。
これからどうしようかと考えていた矢先の唐突な宣告に思わず目を剥いた。
「えー…どこに?
いつから?」
母親と妹の涼香が二人で顔を見合わせてにやっと笑ったことに、いつもなら反応しているがそんな余裕はまるでなかった。
「たしか、カナダって言ってたよ。
いつからかは、お母さん聞いてない」
あ、でも、と席を一度でも立ってキッチンへとむかって行った。冷蔵庫から醤油を持って帰ってきた母親は、古谷の小鉢に醤油を垂らした。
「でも、年末には帰ってくるって行ってたわよ。その時会えるじゃない!」
確実に間に合わないのが分かっていながら、指折りで何ヶ月後なのかを数えてしまう。
四ヶ月後。数えてみると、意外にも惜しい期間であったが、そんなことは何の意味も持たない。
夢の中の少女が言っていた言葉が反芻する。
彼女は、バイバイと言った後、またねと言い直したことは、ずっと引っかかっていた。
またねと言い直してくれていたことだけがやる気を出す唯一の救いだったが、再び友海に繋がる手がかりは、思いつかなかった。
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