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今年ももう残すところ、両手で数えられる程度になっていた。
クリスマス色に染まった街を通り抜けて、郊外へと車を走らせる。
頭上に鳴り響く轟音の頻度が増し、それは古谷の胸の高鳴りと共鳴しているようだった。
国際線ターミナルの前に車を止めると、そこには友海がいた。
まったくと言っていいほどに会っていなかったが、久しぶりの感覚ではなかった。
「お母さんから俊が迎えに来てくれるって聞いてたんだけど、本当だったからびっくりしちゃった!」
「まぁ、免許取ってから運転したい欲が強くてさ!
しかも、夜の空港なんてわくわくするじゃん?」
「へ〜、免許取るとそういうもんなのか〜。にしても、かなり久しぶりじゃない?こうやってまともに話すこと自体。」
違う。あの人、友海との関係は終わっていた。友達免許証から名前が消えたあの日、すでに終わっていた。
彼女と古谷の過ごした日常は、あの日、彼女の非日常に飲み込まれた。戻るはずなんてなかった。
彼女との非日常を生み出すまでは…
彼女との続く未来を想像できた日、彼女と過ごす未来を描き切れた日、その描けた未来は、その時の古谷にとって、まだみたことのない景色だった。
日常ではない。それは、古谷にとっての非日常だった。
非日常が、非日常を上書きする…
だから、今日は久しぶりの再開の日なのではなくて始まりの日である。
描いた非日常が、日常に変わるための始まりの日。
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