エリカ・J・J

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1998年 選ばれしエリカの母親は「真子(マコ)」 ○○県○○郡日野町、のどかな田園風景が広がる田舎町 ごく普通の家に生まれ育った。 祖母と両親、妹の五人家族である。 真子は二十歳、未婚である。親のスネをかじっているが社会人である。 真子が妊娠に気づいたのは、受精から1ヶ月ほどの頃だった。 少し前からお腹に違和感があったのだが、まさか妊娠しているとは夢にも思わなかった。 真子は困惑した。 何故このような事になってしまったのか?原因に心当たりがまるでなかった。 相談する相手もいなかった。 真子は人見知りで友達もいなかった。 親に相談しようかと考えたが、あれやこれやと憶測で疑われ責められる。 それが嫌だった。 真子は自分が嫌いだった。 人見知りで臆病で容姿にも自信がなかった。 一生結婚なんて縁がない物と思っていた。 「そんな私が妊娠なんて……」 「私は選ばれたの?」 「この子を産む事が私の使命なのか」 真子は考えた。 「この先どうなるか分からないが、この子を産んで育てよう」 真子は決心したのである。 子供にとっての最善の選択は、真子にとっては最悪の選択であった。 家族に内緒にしていたが、みるみるうちに真子のお腹は大きくなっていった。 親にもバレてしまい問い詰められる事になった。 真子は全てを話したが信じてもらえなかった。 そして、産むことを告げたが猛反対を受けた。 当然である。 普通の親なら反対するのは当然である。 特に真子の親は世間体を気にする親であった。 近所の手前、親戚にも恥ずかしいと厳しく当たった。 真子は今まで貯めていた全財産を待って家を出た。 相談する人も無く、取りあえず東京へ向かった。 東京には、知り合いや友達が居るわけではなかったが、「人が隠れるには人の中」人混みの中の方が隠れて生活がしやすいと思ったからである。 東京へは出たものの現実は厳しかった。 持っていた全財産もアパートを借り、当座の生活費でほとんど使ってしまった。 アルバイトを見つけ頑張ってはいる物の、食べるだけで精いっぱい、病院へ行くお金まで手が回らなかった。 お腹の赤ちゃんの父親はいない。お金も無い。病院へも行けない。不安は募るばかりである。 「家を出たのは間違いだったのかな」と頭をよぎることもあったが、後悔はしなかった。 妊娠して四カ月、お腹はどんどん大きくなり、いつ生まれてもおかしくないぐらいになっていた。 「成長が早い」 通常より何倍も早く成長していた。 その時は突然やって来た。 夜中、真子はお腹の痛みで目が覚めた。 痛みで動けない。 歩くことも出来ない。 はいつくばつて玄関の所まで来たが、あまりの痛さに気絶してしまった。 どれくらい経ったのだろうか? 真子は目を覚ました。 傍らに女の子が座っていた。 「ダレ?」と思ったが直ぐに気付いた。 我が子である。 女の子はこちらをじっ~と見つめていた。 回りには血が散乱していたが、お腹の痛みは無くなっていた。 何事も無かったような静けさだった。 女の子だけがこちらを見て笑っていた。 真子の体は何とも無かった。 不思議である。 おそらく、宇宙ウイルスによって体を支配されていたことが、真子の体を守ることに繋がったと思われる。 女の子は何事も無かったかのように 「おなか、ちゅいた~」と…… 真子はびっくりした。 生まれて直ぐの子がしゃべったと…… 真子は確信した。 やはり、この子はただ者では無いと。 真子は子供が無事で生まれた事と安堵感、そして、感謝の心で涙が止まらなかった。 真子は子供に「エリカ」と名付けた。 名前の理由、特に無かった。 幼い頃、近所にエリカと言う女の子がいて、綺麗で明るい子がいた。真子の憧れの子だった。 「エリカ」誕生。 物語は、ここから始まる。
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