エリカ・J・J

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「エリカの能力」 エリカは3歳になった。 真子はエリカを外に出さなかった。 エリカも外へは出たがらなかった。 家の中で一日中テレビを見ていた。 エリカはテレビの中の出来事を理解できるようになっていた。 エリカは時々泣いていた。 ドラマで人が亡くなるシーンになると泣いていた。 しかし、暴力シーンでは笑っている時もあった。 一体何を考えながらテレビを見ているのか、何を感じて涙を流し、笑っているのか、真子は複雑な思いでエリカを見ていた。 真子は昼も夜もアルバイトをしていた。 しかし、休憩時間やバイトからバイトへ向かう僅かな時間も家に帰り、エリカと過ごす時間を大切にしていた。 エリカも大切に育ててもらっていることに満足していた。 ある時、真子がアルバイト先からチューリップの球根を貰ってきた。 二人は小さな段ボール箱に土を入れ、大きく育つのを楽しみにしていた。 特にエリカは球根を見るのは初めて、綺麗な花が咲くのを凄く楽しみにしていた。 エリカ「ママ、このチューリップいつ頃咲くの?」 真子「うーん。芽が出て葉が伸びて……1ヶ月ぐらいかな、もう少し先かな……」 エリカ「ふ~ん。エリカそんなに待てるかな。早く大きくな~れ」 真子は、こんなエリカが愛おしくてたまらなかった。 翌日、小さな芽が出ていた。 エリカはとても喜んだ。 真子は、「ちょっと早過ぎない」と思ったが、芽が出かかっていた球根だったのかなと思い大して気にもしなかった。 更に翌日、新芽は5センチまで伸びていた。 「二日で5センチも伸びるなんて信じられない。変な球根」と真子は思った。 それからも花は成長し、1週間で花が咲いた。そして、七日目に花は枯れた。 しかし、その翌日、また新芽が出ていた。 真子は「ハッ!」とした。 「もしかしたらエリカが何かしているのかも?」 確証はないが、なんとなくわかった。 エリカが生まれてから、不思議なことは何度もあった。 その後も花は成長を続け、花は咲き枯れるを4度繰り返した。僅か1ヶ月の間の事だった。 5度目はなかった。 真子は土から球根を掘り返した。 まんまるだった球根は、干からびて小さくなっていた。 エリカは花が咲く度に涙を流し笑った。 そして、怒りを覚えた。 その怒りは、エリカ自身への怒りだった。 エリカ「エリカは、お花さんを大きくして、花を咲かせたかっただけなの に、どうして枯れてしまったの?」 エリカは、花の成長を願っていたのに、花が枯れてしまったことに疑問を持ったようだ。 成長を続けるという事は、老いに繋がるのか? 成長を続けさせる力は善なのか悪なのか? エリカには理解出来なかった。 数日後、エリカは家の前でしゃがみ込んでいた。 見ると、カマキリが蜘蛛をとらえて、捕食していた。 エリカは蜘蛛を助けようとしたが真子は止めた。 真子「カマキリも生きる為に蜘蛛を食べる。この蜘蛛を助けたらカマキリが死んでしまうかもしれない。これは、自然界では当たり前のこと、手を出してはいけない。蜘蛛も他の小さな虫を食べている」 エリカ「……」 真子はエリカが理解出来るか分からなかったが、食物連鎖の話しをした。 エリカはしばらく考えていたが、思いもかけなかった言葉が帰ってきた。 エリカ「虫や動物は生きる為に弱い者を殺して食べる。じゃあ、人間は殺しても食べないのに、どうして人間を殺すの?」 真子は、「ドキッ」とした。 どう説明していいのか、どう言えばいいのか、頭が真っ白になって説明出来なかった。 真子「エリカがもう少し大きくなれば分かることよ」 と、誤魔化してしまったのである。 真子は、エリカがどんどん変わって行く事に不安を覚え始めていた。
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