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エリカは何が起こったのか分からなかった。
真っ暗である。
遠くの方に出口のかすかな明かりが見る。
エリカは無事だった。
防衛本能がとっさに働きバリアを張って体を守った。
真子は大丈夫か?
エリカ「ママ、ママはどこ?」
真子の返事がない。
エリカ「ママ大丈夫?」
この時、ようやく暗がりに目が慣れてきて見えるようになってきた。
ママがいた。
エリカ「ママ、ママ大丈夫!」
返事がない。
真子は重傷だった。
内臓が破裂しているようだ。
右足は骨折していた。
エリカはとまどつた。
しかし、考えている時間はない。
「治してみせる」とエリカは思った。
しかし、どうすればいいのか分からなかった。
エリカはママの重傷部分に手をあてた。
すると、エリカの手のひらが光り出した。
真子のお腹も光り出した。
エリカには何が起こっているのか分からなかった。
真子の体内には、ウイルスが繁殖している。
変異を続けたウイルスは、違った型に変化していた。
エリカの手のひらに反応して動き出したのである。
細胞は急激な速さで潰れた細胞を作り出す。
破れた皮膚や肉を元に戻している。
止まりそうだった心臓も元通りに動き出した。
キズがどんどん治っていく。
真子の体全体が光に包まれている。
光が収まった時、真子は目を覚ました。
真子の体は無傷の状態となった。
真子は何が起こったのか分からなかった。
エリカの体が光り、その光に包まれて温かい血の流れを感じていた事は覚えている。
真子「エリカ、何かした?」
エリカ「エリカにもよく分からない。ただ、ママを救いたいと念じただけ」
真子「あなたの能力?」
エリカ「分からない」
真子「ありがとう。助かったわ」
二人は泣いてだき合った。
「ウォー、助けて」
「助けて……」
回りでかすかに泣き声やうめき声が聞こえる。
後ろにいた若いカップル、更に、後ろにマドカ親子がいた。
カップルの若い男は「助けてくれ」と手を伸ばしてきた。
若い女も同様に「助けて!」と。
カップルの傷は軽そうだ。
マドカ親子は、二人とも大怪我である。
エリカと真子は親子に駆け寄った。
すると、
若い男「もうその二人は助からない。そっちは後回しにして俺たちを早く助けろ」と………
真子「何言っているの!あなた達は大丈夫!大した怪我じゃない。この親子は放って置いたら命が危ないの!」
若い男「だから、もう助からないって。俺たちを早く助けてくれ」
若い女「私たちを早く助けて、その後で親子を助ければいいじゃない」
エリカは、二人がいったい何を言っているのか直ぐには理解出来なかった。
エリカ「エリカにとってマドカちゃん達の方が大事。あなた達の何倍も大事なんだから」
若い男「さっき、お前が母親を助けたように、俺たちも…、その……どうやったのか知らないが、お前の光で俺たちを助けてくれ。金なら出すから……」
エリカは、心の底から二人を憎んだ。
エリカ「そう、見てたの」
エリカは考えた。
エリカ「わかった。助けるからエリカの手を握って」
エリカは右手を差し出した。
カップルの男女は、エリカの手を握った。
エリカの体が光出した。
若い女「これで私たちは助かるわ」
そして、カップルの体からも光が……、その光は青色。
エリカの方へ流れている。
エリカのもう片方の手はマドカの手を握っている。
エリカの体から、マドカの方へ光が流れて行く。
その光は……赤色。
カップルの光はエリカを通してマドカに流れて行った。
若い男「なんだか力が抜けて行くようだ。」
若い女「大丈夫なの?」
エリカ「大丈夫。何ならやめますか?」
若い女「なんだか、意識がもうろうとして来たんだけど?」
エリカ「エリカに任せて」
カップルは見るみるうちに痩せ細っていった。
薄れかけていたマドカの意識が戻った。
傷もどんどん消えていった。
エリカ「まだ完全じゃないけど、母親の方も早く助けないと時間が無い。」
マドカから手を離し、母親の手を握った。
真子「エリカ、大丈夫?このカップルどんどん血の気が引いているように見るんだけど?」
その時、エリカはゆっくりゆっくり振り返った。
……「バァ…マ……、わだじに…ばぁかぜでぇ…」
真子は、その恐ろしい声に驚いて、慌ててエリカの顔を見た。
真子「キャーッ!」
真子は振り返ったエリカの顔を見て「ギョッ!」となった。
まるで、黒い悪魔のような怪物の顔をしていた。
真子「誰?何者!」
……「ばだじは……ヘリ…カ。ヘリ…カのながにいる…ぼう…じとりの……ヘリ…カ……」
真子「ぼう…じとり…て、…もう一人のエリカ?」
怪物はマドカの方に向いた。
すると、エリカの顔が
ゆっくりゆっくり怪物から天使の顔になり、更に、慈悲深い仏様のような顔になり、最後はこの世の生き物とは思えないような顔になった。
……「マ…マ…」
……「わた…し…は、もう…しとり…の…エ…リカ。うま…く、しゃ…べれ…ない…がゆるし……てくださ…い。」
真子「えっ!もう一人のエリカ?」
真子「さっきの怪物も同じ事言っていた。あなたは、さっきの怪物と違うの?」
……「ちが…う」
真子「……」
マドカの母親はどんどん回復していった。
エリカの体から光が消えた。
カップルは息を引き取った。
エリカの顔が元に戻った。
マドカ親子は完全には戻らなかったが、軽傷程度までになった。
エリカ「これで、大丈夫。今のエリカに出来るのはここまで。」
マドカ親子「ありがとう」
マドカ親子は何度もお礼を言った。
間もなくして、救急隊員達が助けに来た。
エリカ親子は無傷だったが、念のため精密検査を受ける事になり、病院へ運ばれた。
マドカ親子も病院へ運ばれたが、別の病院だった。
しかし、エリカ達は検査前に病院を抜け出し家に向かっていた。
家へ向かう途中で……
真子「どうしてカップルを助けずにマドカ親子を助けたの?」
真子「マドカちゃんが友達だから?それだけ?」
エリカ「マドカちゃんは友達、助けて当然。どうしても助けたかった」
真子「でも、あのカップルだって助けてあげられなかったの?」
エリカ「あのカップルは要らない。あの場合どちらかを選ばなくてはならなかったの」
エリカ「エリカの力はママに注いだわ。エリカには力が残っていなかった。マドカちゃん達を助ける為にはカップルに犠牲なってもらうしかなかったの」
真子「かわいそう」
エリカ「かわいそう?あの二人が?あの二人は生きていても世の中の役には立たないわ。」
エリカ「善か悪かと言えば悪ね。悪は要らない」
エリカ「それよりママ、驚かせてごめんなさい」
真子「何のこと?」
エリカ「二人のエリカの事」
真子「あっ!忘れてた」
エリカ「あの二人はずっ~とエリカといっしょなの」
エリカ「黒くて怖い顔しているのがジョーカー、白くて優しい顔がジャスティス、エリカが付けたの」
エリカ「ジョーカーは正義感があるけど気まぐれ屋さん。自分の好きな事しかしないの」
エリカ「ジャスティスも正義感は強いわ、でも、すっごい頑固なの。いつも、ジョーカーともめるの」
真子「エリカ・Ĵ(ジョーカー)・Ĵ(ジャスティス)」
真子「今日の事は誰にも言わない事。いいわね」
エリカ「イエッサー」
二人は家路を急いだ。
一方、遊園地では事故の原因を調べる為に警察が来ていた。
報道関係者も多く詰めかけて大にぎわいになっていた。
記事によると、乗客20人の内、無傷2名、軽傷2名、重傷14名、死亡2名と発表されていた。
この事故の担当をしていた早瀬信一。
元新聞記者。
死亡した2遺体を見て、何か得たいのしれない恐怖を感じた。
早瀬「何かある!」
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