1,入学

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 正直係とか委員会なんて、黙ってすっぽかそうと思っていた。これまでも、そういう役割に属していなくても、勝手に教師やらが、決まりましたね、とか言って終わりにしてたから。大体ばれないで中学は乗り切ってきた。  でも、この学校で華の他にまともなやつなんて、そうそういない。放置すれば、華だけに仕事を押し付けていくのは目に見えている。そこまで考えたところで、もう、決まっていた。 「仕方ねぇな…」 「やた!」  すごく嬉しそうだ。初対面で仲良くなったばかりで、この子は私のことなんて何一つ知らないというのに。よくそんな風に人を軽々しく信じられるなと、眩しくなる。そういう所が本当に純粋だって分かるから、だからこの子の笑顔を見てると目を細めたくなるのかもしれない。  係が決まったということで、華が意気揚々と、黒板に二人分の出席番号を書いていった。時間になっても決まっていない役割は、まだ何も決めていない人の中からくじ引きで決め、なんやかんや色々終わる。 「先生、一通り終わりましたよ」  さほど恐ろしくないかのように、眼鏡君は先生を叩き起こす。彼以外の全員はまるで爆発寸前の時限爆弾を前にしているかのような緊張感を持っている。  ヤンキー教員の眉間にしわが寄る。一気に緊張が高まる。次の瞬間、彼はあくびをしながら目をこすった。どうやら無事に起きたらしい。 「あー……ごくろー。」 「ここに、係と委員会の担当者メモを置いておきました。あと、出席簿も着けておきました。」 「おー助かるわ」 「いえ」  もう、あいつが先生やったほうがいいんじゃないか?と思ったのはここだけの秘密だ。ばれたら後が恐ろしい。 「んじゃ。解散。気ぃ付けて帰れよ~。なんか騒ぎ起こそうもんなら、容赦しねぇからな」  恐ろしいことを言って、小脇に出席簿を抱えながら手をひらひらさせて教室を去っていった。そのあとは、最初と同じようでいて、どこか落ち着いた雰囲気の教室内だった。  帰り支度をしてさっさと帰ろうとしていたところ、また華から声をかけられた。
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