1,入学

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「え~では、式を始めます。」  やっと全員が席に着いたところで、さっきの気弱な教員が入学式を進めていった。それからは、いろんな人のありがたーいお言葉だそうで、有難く睡眠時間にした。昨日は制服の改造に時間をかけていたので、よく寝られて助かった。スカートはあんなに長いと動きづらいし、ネクタイなんかゆらゆら邪魔くさい。あんな意味のないものは捨てた。あたしは人より、ほんと、ほんのりと、ちょこっとだけ…小柄なわけで。というわけで、スカートの裾上げ以外にも、ブラウスやブレザーのサイズを調整したり、朝方までかかった。幸い寝起きは悪くないので、寝坊はしていない。  ぐーすか寝てると、どうやら式が終わったらしく、横の奴が起こしてきた。 「ね、君。起きないと…みんな移動しちゃうよ」 「ぐがー…ん。んぁ。式終わったのか。」 「とっくに終わって、今は休み時間。」  親切にも起こしてくれたのは、少し大人しそうな…女子生徒。こんなヤンキー校に珍しい、可愛い子だ。今時こんな子がこんな学校にいるなんて、絶滅危惧種だろと思いつつ、パイプ椅子から立ち上がる。 「おーそうか。くぁ~…。ありがとな」 「うん。私、柳瀬華(やなせはな)っていうの。苗字は、”柳”に、瀬戸内海の”瀬”。華は、中華料理の”華”って書くよ。クラス、一緒だよね。これからよろしくね!」 「お~。あたしは小篠柊那。あー、漢字は”小さい”に篠。漢字の"ひいらぎ"に那覇の"那"。」 「へぇ~柊で”ひ”って読むんだ!なんか、いいなぁ~。」 「そぉかぁ…?あんま読みやすくないだろ」 「でも、オリジナリティあって凄い素敵だと思うなぁ。あ、歩きながら話そっか」 「そうだな」  名前を改めて褒められたことはなかったから、少し驚いた。大体漢字よりも、”ヒナ”って音で認識されてたから、雛鳥だとか馬鹿にされてた。……ちっこいし。  そうやって会話をしながら体育館を抜けて、ずるずると教室の方へ二人歩いていく。
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