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1,入学
4月。桜の吹雪が舞って、小枝の上で鳥たちが春を知らせる。そんな陽気に包まれながら、あたしは今日が初日の学校へと思いを馳せていた。いや、正確には高校入学に対する家族の反応を思い出していた―――――――
「柊那姉(ひなねえ)、あの高校に入学するって本当だったの?!」
「ん?そうだけど、なんかあっか?」
「ありありに決まってるじゃん!!あの学校、すっごいヤンキー学校だって噂だよ!?」
「黙ってればだいじょぶだろ」
「柊那姉がそんなに黙ってられるわけないじゃん」
そうジト目で訝しげに視線をぶつける。この子はあたしの妹、小篠歩寧(おしのあゆね)。家事をあたしと分担してこなしているが、他にも勉強もできる器用な子だ。しかし、大人しそうに見えて口煩い。
「ねぇ、ほんとに行っちゃうの…?」
今度は心配そうに、眉を下げて見上げてきた。全くかわいい妹で仕方がない。その表情でいくらでも人を殺せそうだと思う。とは考えつつ、心配させるのは本意ではないので、安心させようと、言葉をかけた。
「大丈夫。あたし強いし」
「ん~…いくら何でも武道かじってたくらいじゃあねぇ…」
「…」
いかん、余計心配させたかもしれない。本当に大したことじゃないのに。中学は毎日がケンカ祭りだったわけだし、それがもっと身近になるだけで。少しの沈黙の後に何とかこう誤魔化した。
「ま、学校だし、センセーいるだろ。目がある中で悪さするヤツなんざいねーよ」
「そうかもしれないけど…」
「いざとなったらちゃんとやりかえすしさ」
「…もう!それじゃあ傷つくの前提じゃない!」
「たいしたことねぇって」
「ダメ!学校で傷作ってきたりしたら、絶対許さない」
「えぇ…」
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