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「……そうだね」
来年の花火を見る約束は、果たされなくて。
一緒にいる時間より何倍も、私は長く生きた。
それでもキミは、幸せだった?
「ずいぶん待たせちゃったね」
「いや……忘れないでいてくれて嬉しかったよ。ありがとう」
そんなに申し訳なさそうにしないで。
キミからもらった幸福な時間があったから、ここまで来られたんだよ。
「私も。迎えに来てくれて嬉しかった。ありがとう」
「いや、どういたしまして」
笑顔で答えたら、キミはくすぐったそうに目を細めた。
「行こうか」
「うん」
手をつなぎ、天を仰ぐキミにつられて視線を上げる。
そこには、まるで星のように無数の光がきらめいていた。
「あれは?」
「人の心そのものだよ。あそこに、おじさんとおばさんもいる」
「お父さんとお母さんが……?」
もう会えないと思っていたけれど……そこで待っていてくれたんだね?
「あのね」
「ん?」
あのころと変わらない優しい手を、見失わないようにしっかりと握りしめる。
「大好きだよ」
「……オレも。好きだよ」
キミは一瞬目を見開いて、照れ笑いをした。
「今は、独り占めするからな?」
「ふふ。いいよ」
天へ向かって飛び立つ前に、もう一度光の中を見つめる。
あなたは家族に囲まれていて……目が、合ったような気がした。
「さようなら」
私の、深愛なる人――
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