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――私、何してたっけ?
目を開くと、自分の部屋の天井が見えた。
もしかして、寝ちゃってた?
慌てて体を起こすと、フラリとめまいがした。
「えっと……」
今日が何月何日で、眠る前まで何をしていたのか思い出せない。
「うーん……?」
自分を見下ろすと、なぜか浴衣を着ている……。
「あっ! そっか」
急速に記憶が戻り、私は両手をパンと叩いた。
今夜は花火大会に行くんだ。
なのに、なんで寝ちゃったんだろう?
「わっ……ヤバい!」
姿見をのぞくと、髪がボサボサになっていて。
「お、お母さーん! 髪結って!」
私は慌てて階段を駆け下りた。
時計を見ると、約束の時間の十分前だった。
「なんで起こしてくれなかったのー!?」
「声掛けたけど、全然起きなかったのよ」
「起きるまで起こしてよお」
「だって気持ちよさそうに寝てたから」
「う〜……私のバカ」
そもそも私のせいなんだから、お母さんを責めるのは筋違いというものだよね。
「少しくらい遅れたって、大丈夫でしょ」
私の髪をまとめながら、鏡の中のお母さんが微笑んだ。
あれ、なんか……泣きそう。
突然、涙があふれて。
「えっ、痛かった?」
驚いたお母さんが手を離して、私の髪が舞い降りた。
「ううんっ! なんでもないよ。目にゴミが入ったかな……」
手の甲で涙を拭い、笑ってみせる。
「そう? 痛かったら言ってね?」
お母さんの手が、優しく髪を梳いてくれた。
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