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『ピンポーン』
完成したところで、インターホンが鳴って。
「お客さんよ」
リビングに戻ってきたお母さんは、心なしか頬をゆるませていた。
「お客さん?」
その反応が気になって、首をかしげる。
「おじゃまします」
「……!」
と、同時に“キミ”が現れて……私の心臓は、ドクンと大きく跳ね上がった。
「迎えに来た」
すっかり声変わりした低いつぶやきに、胸がきゅうっとしめつけられる。
どうしてだろう……すごく懐かしい気持ちになって。
「なんで泣いてんだ?」
また、涙が頬を伝っていた。
「なんかね、今日、変なの……」
立ちすくむ私に近づいたキミが、左手で優しく涙をすくい取ってくれる。
「変なのはいつものことだろ?」
「えっ……ひどい」
「冗談だよ」
「ホントに冗談?」
キミが楽しそうに笑うから、私もつられて笑ってしまう。
「浴衣、似合うね。可愛い」
まるで大切なものを見るように、目を細めるキミ。
私を見つめるときの、その表情が好き。
目で『好きだ』と伝えてくれているみたいで、ドキドキする。
「そろそろ向かった方がいいんじゃない?」
お母さんに背中を押されて、玄関へ向かう。
「はい、これ。気をつけて行くのよ」
「うん。ありがとう」
巾着を渡され、お母さんを見上げる。
「……なあに?」
「ううん。いってきます」
不思議そうな顔に、私は笑顔を返した。
今日の私は、本当に変だな?
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