優しい手

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 私の大好きな人。  私を好きになってくれた人。  私の大切な人。  私を大切にしてくれる人。  ずっと、キミと一緒にいたいと思う。 「きれい……」  黄金色にはじけ、しなだれていく火の花。  遅れて(とどろ)く、破裂音。 「最後の花火、すっごく大きかったね!」  興奮気味に飛びつくと、キミは私を受け止めて。 「来年も見に来ような」    ぎゅっと抱きしめてくれた。  本当に、幸せだなあ。  キミとの時間が、ずっと続くと良かったのに。  ……良かったのに?  なんでそんな風に思ったんだろ? 「人が流れてきたな。オレたちも帰ろうか」 「だめ!」  キミが手を引いて、私は反射的にその場に踏みとどまった。 「どうした?」  怪訝そうに振り向くキミ。 「行っちゃだめな気がする。もう少し人が減ってから帰ろう?」  得体のしれない焦燥感がおそい、必死に手を引く。 「そう? じゃあ、待つか」  でも、キミはすぐに同意してくれて……泣き出した私をそっと抱き寄せた。 「大丈夫?」 「うん……」    私は泣いてばかりなのに、何も聞かずにいつまでも寄り添ってくれる。  キミは、とても優しい人……   「ごめんな」 「えっ?」  唐突な言葉に顔を上げたら……キミの涙が、私の頬にポツポツと落ちてきた。 「ど、どうしたの?」  びっくりして、キミの頬にふれる。 「約束、守れなかった」 「……どういう、こと?」  不吉な予感に体が震えてくる。
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