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【巨乳派か?それとも貧乳派か?】
神経を疑うサリダンの質問に、クラーラは顔を真っ赤にした。
(サリダンさん、最低!!……あ、でももしかしたら、わざと下品な質問をして、ヴァルラムを困らせようとしているのかも??)
ふと気付いたその可能性に、クラーラの頬に集まった熱が冷めていく。
マノア植物研究所の研究員達は皆触れて欲しくない過去を持っている訳アリ者であるため、とても人見知りだ。
だから助手としてここで働き始めた当初、セクハラ発言こそ無かったが、露骨に拒絶という壁を作られていた。
今にして思えば、あれは入社試験のようなものだったのだろう。
ここが唯一の場所と覚悟を持っていたクラーラは、その試験に無事クリアできたけれど、行く場所などごまんとあるヴァルラムなら、赴任期間を待たずに王都に戻ってくれるかもしれない。
そんなズルい期待がつい膨らんでしまう。
けれど、世の中そんなに甘くは無い。
ヴァルラムは、眉一つ動かすことなく、まるで入学試験の面談に挑む受験生のような生真面目な表情で口を開いた。
「己に無いものに対して良し悪しを語る程、私は弁えのない人間ではありません。女性しか持ちえないそれは、尊きもの。どんなものであっても美しいと思っています」
お上品かつスタイリッシュな返答に、サリダンはピューっと口笛を吹く。
次いで立ち上がり、ヴァルラムに手を差し伸べた。差し出された手をヴァルラムはしっかりと握る。
それは、おっぱいを通して一つの絆が生まれた瞬間だった。
「よろしくな、ブラザー。俺はあんたを歓迎する」
「光栄です。こちらこそよろしくお願いいたします、兄者」
(やるな)
固い握手を交わす二人を見て、クラーラはぐっと呻いた。
そして悔しさと同時に、気難しい彼らをあっという間に懐柔したヴァルラムに驚きが隠せない。
本当に、本当に、くやしいけれど、さすがとしか言いようが無かった。
ちなみに、クラーラは古参の研究員と打ち解けるまで3ヶ月の時間を要した。
人間関係とはこれほどまでに厄介なものなのかと、眠れぬ夜を過ごした回数を数える為には、人の手足をお借りしないといけないほど。
後に用務員のカールから「君はすごい!たった三ヶ月で、受け入れられるなんてっ」と褒められた時には、誇らしい気持ちと複雑な気持ちが半々だった。
けれど、ヴァルラムはその記録をあっさりと打ち破ったのだ。
きっとこの記録は、殿堂入りするだろう。かなり悔しい。
「では、皆さん。挨拶はこれまでということで。お時間をとらせて悪かったです。そして改めてどうぞよろしくお願いします」
場を締めくくるヴァルラムの声が共同研究室に響く。
クラーラは、ついこれから始まる彼との生活に小さく溜息を吐いてしまった。
けれどもそれは、我先にと個別研究室や温室に急ぐ研究者の足音でかき消されてしまった。
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