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彼女のことが気になる。かといって、声をかける勇気もないし、そこまで話したいというわけでもない。そんな俺だったが、思いがけないところで話す機会があった。
俺が友達と教室で、とあるラノベについて盛り上がっていた時、傍を通りすぎた彼女がぼそっと呟いたのである。
「ばっかみたい。異世界転生とか、そんな子どもっぽいものが好きなんて」
流石に、カチンと来た。確かにそれは流行の、いわゆる“異世界転生モノ”ではあったが。キャラクターにも魅力があるし、話も面白い。複雑な表現がない分ライト層にも読みやすく、アニメ化も予定されている有名どころの作品である。WEB小説発だから、というイメージだけで馬鹿にされるのは極めて遺憾なことだった。だからつい、本音を漏らしてしまったのである。
「人が好きなものを馬鹿にして楽しいのか?」
「……っ!」
一瞬、星子は今まで見たことのないような顔で黙りこんだ。そこまで深く考えていたわけじゃない、とでも言いたげな顔だ。
俺は一瞬沸騰しかかった頭をどうにか冷やして、彼女に告げたのである。
「……いい機会だ。お前にはちょっと訊きたいこともあったし……まだ休み時間が終わるまで時間あるだろ。ちょっと表出ねえか」
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