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プロローグ
「ずっと……待ってるから」
昔、私は誰かにそう告げた。
涙で視界は霞む。鼻水で鼻はつまり、息がし辛い。だけど……必死に呼び止めた。大切な……大切な『あの人』が行ってしまうから。
「私が悪かったから!お願い……戻ってきて……」
あの人が行ってしまう。優しいあの人が私のせいで。
「ずっと……待ってるから」
その言葉を最後に『あの人』は私の前から消えた。大切だった、大好きだった……あの人はもういない。
名前はなんだっただろう?
私と『あの人』のつながりは?
自分は知っていたはずだ。なのに……もやがかかったように思い出せない。
あの人は……私の『記憶』から消えたのだ。そして、たぶん……『この世界』の記憶からも消えたのだと、何故かそう思った。
幼い私が何で、そこまで理解したのか、考えたのか謎である。だけど、『消えた』のは事実だから……
私は探し続けている。私の『大切』だったであろう『その人』を。
ずっと……待ち続けているのだ。
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