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女性向けのデザインをさせたら右に出るものはないんじゃないかと、勝手に美冬が思っている石丸諒。彼はとても優美な見た目をしている。
ピンクベージュに染めた髪は下手をしたらキワモノにも見えそうなのに、石丸がしていてもその品格を失うことはない。
むしろ元からその髪色だったかのように違和感がないのは、見た目の良さがあるからだと美冬は思っている。
まるで二次元から飛び出してきた王子様のようだ。
本人がモデルをやっていてもおかしくないような美形なのである。そしてそのデザインも本人に負けず劣らず優美だ。
その二人を引き連れて、美冬は張り切ってコンペに挑んだのである。経営者として判断することは今までもあったけれど、会社の今後を左右するほどの話は初めてだった。
準備されていた会議室には30代から40代くらいの男性が六名、50代ほどの女性が一名が入ってきて、テーブルの周りに座る。
特に自己紹介的なものはなく、その中でも比較的若い眼鏡をかけた理知的な男性がにこりと笑って石丸を促した。
「準備ができたら、どうぞ?」
美冬はすう……と息を吸った。
「私は『ミルヴェイユ』の代表をしています、椿美冬です」
テーブルの周りの人のうち、数人が息を呑んで美冬を見たのが分かった。
美冬と一緒に来た石丸がプレゼンをするのだと思ったのだろう。
いつものことだ。美冬は慣れている。
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