2.ご褒美をくれると言ったくせに

9/12
前へ
/256ページ
次へ
「ミルヴェイユについてお話させていただきます」  女性なのかとか、若造がと思われても構わない。美冬は自分にできることをやる。  会社の理念や創業からの流れ、今回の話を受けた動機など準備した通りに美冬は話していく。  何人かはメモもしてくれているようだったし、時折深く頷いている様子も見えたので、感触は悪くないのかなと思った。  美冬は一時間ほどでプレゼンを終え、 「何かご質問はありますか?」 と締めに入る。  目つきの鋭い若い男性が手を挙げた。 「お願いします」  美冬が彼の方を見ると彼は腕を組んだ。  美冬はどきんとする。  それは別に彼が顔立ちが整っているどうのこうのではなくて、腕を組む、という行為自体が美冬達に対していい印象がない、と言う事だからだ。 「シナジー効果が見えない」 「はい?」  案の定硬くて冷たい声だ。  美冬は柔らかく笑顔を向けたが、正直怖い。彼の迫力に圧されそうで、それを一生懸命鼓舞しながら笑顔を作った。 「弊社が御社と手を結ぶに当たっての相乗効果だ」 「それは企業価値が上がれば……」 「曖昧なんだな。その企業価値を上げる具体的な方法論を聞きたい」  そこで、たった一人参加していた女性が手を挙げた。 「槙野(まきの)さん、この会社はとても価値のある会社です。女性にとっての憧れを具現化している。そうね……男性にはお分かりにならない感覚かもしれないわ」
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14079人が本棚に入れています
本棚に追加