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「木崎さん、それはどうだろうか?」
槙野と呼ばれた目付きの悪い男性と、女性の間で火花のようなものが散ったのが見えたような気が美冬にはした。
──え、えーと?
突然始まったその争いに美冬は戸惑う。すると、最初に口を開いた眼鏡の男性が口を挟んだ。
「ここでお話が決定するという訳ではない。椿さん、他社のお話もお伺いして決定することなのですよ。ただ、槙野が言うことも間違ってはいない。お話をお伺いすると、今まで他社との提携などはされていないようだし。椿さん、相乗効果というものを少し考えてみてほしい」
眼鏡の男性の穏やかな話し方に、美冬は頷いた。
「分かりました」
「次があれば、お会いしましょう」
そう言われて美冬は背中が寒くなった。
当たりは柔らかいけれど、『次があれば』とは。
「今頂いた宿題を必ずお持ちします」
咄嗟に出た言葉だ。
彼は眼鏡の奥の目をふっと細めた。
「お待ちしていますよ」
その後も数人から質問が出たけれど、それ以降先ほどの2人が口をはさむことはなかった。
それにしてもインパクトのある2人だったと思う。
一通りの質疑応答を終えたら『グローバル・キャピタル・パートナーズ』の人達は会議室から出ていったので、3人で片づけを始めた。
「噂通り、CEOは冷静な方でしたね」
「え!? 杉村さんCEOを知っているの?」
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