13798人が本棚に入れています
本棚に追加
/256ページ
浅緋は片倉に寄り添って、一緒にご挨拶をして回っている。その慣れた様子にも見蕩れそうだ。
ほとんどは片倉が対応するのだが、時折浅緋もお客様に話しかけられている。そんな時も品よく笑顔を向けて、話しているのが見えた。
捕まりすぎじゃない?と思うと片倉が自然にそっと肩を抱いて抱き寄せて、浅緋を庇うようにしている。
本当にお似合いのとても仲の良い夫婦なのだ。
「本当に仲がいいよね? あれで一時期は政略結婚なんて言われてたなんて思えない」
ねっ?と美冬に首を傾げてくるのは、タキシードジャケットを着こなした、なかなかに顔立ちの整った男性だ。
「政略結婚?」
「そう。そんな風に言われてたよ」
美冬に話しかけてきた男性はにこにこしている。悪い人ではなさそうだが、見知らぬ人である。
「え……っと、すみません、どちら様でしょう。ご挨拶していたらごめんなさい」
「いえ。初めましてです。でもうちの商品は取り扱って頂いていると思う。株式会社ソイエの代表をしています。国東と申します」
そう言って彼は美冬に名刺を渡す。
株式会社ソイエは繊維の専門商社で、確かにミルヴェイユも取引があった。
美冬もバッグから名刺を出して渡した。
「お世話になっております」
「美冬さん! 僕、実はお祖父さんに良くして頂いているんです」
最初のコメントを投稿しよう!