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美冬は指輪を手に取って、槙野に渡す。
槙野はそれを受け取った。
「もう、逃がさねぇからな」
「逃げないよ」
指輪を美冬の左手薬指に付ける。
会場は今日イチの盛り上がりを見せた。
ちなみにこの時の写真を手持ちのスマートフォンで撮ったのは一人二人ではなくて、それをSNSにタグ付きで上げたのも、一人二人ではなかった。
そのビルはプロポーズが成功するビルとして話題になるのは後日のことである。
取引先も話題になることで非常に喜んだことも後日の話だ。
そして今はレセプションパーティ会場である。
「素敵! 素敵だわ!」
綾奈も涙を流しながら感動していた。
ちょっと涙もろいのかもしれないが悪気はない人物なのも間違いはなかった。
「本当。あの槙野さんがねー。年貢の納め方も派手だなあ」
国東が感心したような声を上げる。
その声に気付いて綾奈が顔を上げ国東を見た。
「あなたは?」
綾奈が尋ねる。
「僕は株式会社ソイエの代表をしています、国東と言います」
「あら、繊維の会社でなくて?」
「ああ、そうです。よくご存知ですね」
「私の母はエス・ケイ・アールという会社の代表なんです」
「ケイエムさんか!」
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