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そんな美冬を抱きしめるのは自分だけなのだという幸せ。
──自分だけが美冬を守ることができる。
それは槙野の中ではとても価値のあることだった。
京都駅に程近い大きな寺院の庭にランウェイが設置されていた。昨日までは別のブランドがここでファッションショーを行っていたそうだが、明日はミルヴェイユがここでファッションショーをする。
ランウェイ以外の装飾は一旦全て外され、ミルヴェイユがデザインしたものに変えられていく。
美冬はそれをとても感慨深い気持ちで見ていた。
庭には控室まで準備されていてその中に衣装が運び込まれている。
今回のオファーでコラボ商品も出す、と言った美冬に木崎社長も、綾奈も涙を流さんばかりに喜んでくれた。
「けれど、こんな風に注目されたのはコラボがあったからですもん。それは当然ですよね」
「あんなトラブルがあって、うちは訴えられてもおかしくはなかったのに。お返しできない恩を受けたわ」
一人ではできないことも、誰かと協力すればできることもある。
それまではミルヴェイユは孤高だった。
けれど、コンペに参加し、出資には至らなかったけれど、業務提携することでこんなファッションショーに呼んでもらうことができた。
そして、今はパターンオーダーという他の企画も話を進めている。
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