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「なんのことだ?」
「だって、私ばっかり助けてもらってない?」
「……っふ、ははっ」
「何笑ってるのよ」
「ばーか、お前が甘えてくれるのこそ幸せなんだろうが。美冬は心を許した相手にしか甘えない。俺に甘えるってのはそういうことだろう。最初は甘えるどころかイキリ倒してただろう?」
「イキ……」
そうだったかもしれない。そんな風に言われたこともあった。
「いいんだよ。それで」
そう言って槙野は美冬の指に自分の指を絡めた。
周りのみんなももちろんその光景は見えているけれど、まあ、仲良しだからなあの二人は、と思われている。
いつの間にかそんな風に認知されているのだ。
槙野は人前でキスしないだけ感謝してほしいくらいにしか思っていなかったのではあるが。
翌日のファッションショーは大盛況だった。
たくさんの人が見にきてくれて、ランウェイをモデルが歩くと可愛い!と黄色い声が上がる。
熱気を直に感じて、バックヤードで美冬は感動していた。お店で販売しているだけでは決して感じることができなかったものだ。
「美冬!」
最後にデザイナーがランウェイをモデルと歩く、と美冬は聞いていた。石丸がモデルと歩くのはそれは華やかだろうと楽しみにしていたのだ。
そんな石丸が、美冬を呼んだ。
手に持っているのはウェディングドレスだ。
「え⁉︎ それって⁉︎」
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