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2.ご褒美をくれると言ったくせに
「おじいちゃんが入院した!?」
その衝撃的な電話を椿美冬は社長室で受けたのだ。
椿美冬は服飾ブランド『ミルヴェイユ』の社長である。
さらさらの長い栗色の髪がふわりと舞って、大きな黒目がちの瞳がさらに大きく見開かれる。
綺麗なフェイスラインと完璧な配置の唇がきゅっと結ばれた。大きな瞳と小さな唇。
そしてとても整った顔立ちながら表情豊かなのが椿美冬だ。
美冬としてはもっと大人っぽい顔立ちだったらよかったのに、と思うが一般的に見ても美冬の顔立ちは愛らしい。
『ミルヴェイユ』は美冬の祖父が立ち上げた会社で、もうすぐ創立50周年になろうかという歴史を誇る会社だ。
高度成長期には子供服から紳士服、婦人服を扱うアパレルメーカーだった。
しかしバブル崩壊時、祖父は一気に採算が悪くなった紳士服、今後少子化では子供服の売上は見込めないと、紳士服と子供服の生産をやめた。
そして婦人服1本に経営を絞り『ミルヴェイユ』を婦人服ブランドにした。
それまでは大衆向けの服を作っていたのだが、その頃から方向転換し、やや高級感のあるスタイルに変えていく。
メイドインジャパンの高級婦人服はそれなりに固定客がいて『ミルヴェイユ』はデパートでの店舗展開と、本店だけは路面店での店舗展開をしているのが現状だ。
経営状態は決して悪くはない。
けれども伸びてもいない。
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