2.ご褒美をくれると言ったくせに

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 祖父はちょっと破天荒な人で、さらに粋な人だ。  真面目にくそが付くような父と全く気が合わず、どちらかと言うと、祖父とは美冬の方が気が合う。  こんな祖父ではあったけれど、美冬は祖父のその粋なカッコ良さと、服にかける気持ちが大好きだった。  その後の秘書からの電話で病院もゴルフ場近くの病院では嫌だと、普段お世話になっている総合病院への入院を希望し、転院手続も済ませたという。  それでも自宅近くであれば美冬も助かるので、転院したと聞いて美冬は病院に駆け付けた。 「美冬……」  祖父の弱々しい声を聞いて、さすがに心配になった美冬だ。 「おじいちゃん……大丈夫なの?」 「俺はいつ死ぬか分からん」 「え? おじいちゃん、何かお医者様に言われたの?」  先ほど美冬は医師から説明を受けたが 『いやー、骨折以外は本当にお元気で……』 と言葉を濁されたところだ。  わがままを言ったのかも知れないと青ざめた美冬は、担当医にひとしきり頭を下げてきたところである。  その後の検査などで何か重大な病気でも発見されたのだろうか。 「え? いや骨さえ折れてなければ太鼓判を押してもいいほどの健康体だと言われたぞ」  身体年齢は20歳は若いですよーと医師に言われたかなんかでご機嫌である。  だったらちょっとくらい殴ってもいいかな?  豪快に笑う祖父にちょっと殺意が芽生えた美冬なのだ。 「じゃあ、なんでそんないつ死ぬとか言う話になったのよ」
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