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「いや……この年齢ともなれば、正直何が起きても不思議じゃないということが入院して分かった」
まあ、矍鑠とした祖父だが、世間的には年齢を重ねていることも間違いではない。
「そうだなー、引退も考えなくてはいけないな……」
「え!? それは……」
さすがにそこまでは話が進むとは思わなくて、美冬は言葉を失くした。
「美冬が結婚してくれたらなー……」
──出た……。
ここ1、2年の祖父の流行りだ。ここ1、2年で百回は聞いたと思う。
いや、百回は盛った。三十回くらいだったかも知れない。
とにかく、なかなかの頻度で聞くようになったのだ。
「えーとね、おじいちゃん、結婚するには相手が必要なのよ?」
「美冬は俺に似てイケメンだろうが」
おじいちゃん、それは男子に使う比喩でしょう。
「彼氏がいるならいつでも紹介していいんだぞ」
むしろ紹介したい。いるなら。
「美冬……ミルヴェイユのことが好きか?」
「うん! 大好き!」
好きかと聞かれれば即答できるくらい大好きだ。
「だったら、彼氏を連れてこい。このまま右肩下がりの経営は許されないぞ。経営状態を改善するか、彼氏を連れてきたら、社長にそのまま残すよう株主におじいちゃんが働きかけてやる」
何!?突然のその訳の分からない天秤!!
「はあ!? そんなの横暴よ!」
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