2.ご褒美をくれると言ったくせに

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「いや……この年齢ともなれば、正直何が起きても不思議じゃないということが入院して分かった」  まあ、矍鑠(かくしゃく)とした祖父だが、世間的には年齢を重ねていることも間違いではない。 「そうだなー、引退も考えなくてはいけないな……」 「え!? それは……」  さすがにそこまでは話が進むとは思わなくて、美冬は言葉を失くした。 「美冬が結婚してくれたらなー……」 ──出た……。  ここ1、2年の祖父の流行りだ。ここ1、2年で百回は聞いたと思う。  いや、百回は盛った。三十回くらいだったかも知れない。  とにかく、なかなかの頻度で聞くようになったのだ。 「えーとね、おじいちゃん、結婚するには相手が必要なのよ?」 「美冬は俺に似てイケメンだろうが」  おじいちゃん、それは男子に使う比喩でしょう。 「彼氏がいるならいつでも紹介していいんだぞ」  むしろ紹介したい。いるなら。 「美冬……ミルヴェイユのことが好きか?」 「うん! 大好き!」  好きかと聞かれれば即答できるくらい大好きだ。 「だったら、彼氏を連れてこい。このまま右肩下がりの経営は許されないぞ。経営状態を改善するか、彼氏を連れてきたら、社長にそのまま残すよう株主におじいちゃんが働きかけてやる」  何!?突然のその訳の分からない天秤!! 「はあ!? そんなの横暴よ!」
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