14077人が本棚に入れています
本棚に追加
「どこがだ? 経営できない社長を据えておくほどおじいちゃんは寛容じゃないぞ」
「私が会社を引き継いで2年よ。その前の業績不調までは私の責任じゃないでしょ」
ミルヴェイユは業績不調ではない。経営状態は悪くはないのだ。ただ、緩く下がってきているだけで。
だが、今の二人にはそんなことは関係なかった。
美冬の反論にぐっと一瞬詰まった祖父だ。
しかし祖父は真顔で美冬に言った。
「美冬、結婚か経営改善だ」
「結婚ー!? さっきまで彼氏と言っていたじゃない!」
祖父はつーん、と横を向く。
「結婚か経営改善だ」
悔しいことに祖父は筆頭株主だ。しかも株主にも経営陣にも顔が利く立場なのだ。
祖父が美冬をクビにする、と言えばそれは可能なのである。
「杉村さん、経営改善ってなにかしら?」
「経営を良くするってことですか?」
社長室で頭を抱えていた美冬に報告に来ていたマネージャーの杉村理恵が美冬に書類を渡しながら淡々と返した。
杉村とは長い付き合いだ。美冬が『ミルヴェイユ』に入社した時、杉村は企画部でアシスタントをしていた。
当時入社したばかりの美冬は分からないことは杉村に何でも教えてもらった。
数年で異動してしまったのだが、杉村のその異動は昇進であり、美冬が代表になるときにはマネージャーとして、祖父の信頼を得ていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!