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「ベンチャーキャピタルから出資を受けた場合は借り入れとは違い、返済の義務はありません。しかもベンチャーキャピタルから出資を受けることは、その企業の事業内容やビジネスモデルが評価されていると認知され、それ自体にも価値があります」
美冬は書類から顔をあげ、杉村の顔を見ていた。
表情が変わる人でもないのでその心が読めるわけではないが。杉村は淡々と続けた。
「『グローバル・キャピタル・パートナーズ』という会社があります。ベンチャーキャピタルです。そこがクローズドではあるんですがコンペを行う予定です」
「『グローバル・キャピタル・パートナーズ』は知ってる。若い経営者よね? 確か。コンペ? 投資先を探しているの?」
「そうですね。何社かに声を掛けているようなんですけど、実を言うとうちにも声がかかってます。まあ、ご興味があれば……程度だったんですけど」
「ある!」
杉村は少し驚いた。
もともと美冬は判断は早い方だったが、いくら何でも回答が食い気味というのはなぜなんだろうか?
なにか理由があるように感じてそこが杉村には気になった。
一方の美冬はとても強い決意を固めていた。
──この、このコンペに勝てたら……っ!社長を続けられる!!
コンペに参加したのは『ミルヴェイユ』のデザイナーである石丸諒とマネージャーの杉村だ。
実際、この二人は美冬の両腕なのである。
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