至楽のそ

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至楽のそ

今日(こんにち)我々が住むところはいざ都。 今より話すは(ふる)きお話。 誰にでも愛だの憎みだのはある。 今回はそんな愛憎の一例の話。 ある所、姉弟がいた。名前は同じサキだった。 なので、長髪(ちょうはつ)サキちゃん、 短髪(たんぱつ)サキちゃん、と分けられていた。 無論、短髪の方が弟である。 実のこと、彼らは恋人であった。彼らが 生きていた時代はより家族間の恋愛に 厳しかったものだが、それでも隠れつつ抑えつつと 姉弟は恋愛を続けていた。 ある日、短髪のサキが姉に恋愛成就の 参りに行かないか、と尋ねた。 その参りとは、八津練縷之神(やつらるのかみ) と言う神が祀られている神社のことである。 長髪は、弟に少し心配を投げかけたが、 弟が「俺の許嫁との成就願い」と言いくるめらば 大丈夫だと言うのを聞き、僅かの疑心を 持ち(なが)らも神社へ向かうことを決めた。
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