……あ、落ちた

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「一ヶ月前にみぃちゃんが、大事にしているものを落としちゃって。それをたっくんが見つけてきたんです。それからみぃちゃんはたっくんにべったりで、たっくんもそんなみぃちゃんが大切みたいで、いつも二人一緒なんです。」 ほう…、そんなことがあったのか。 「その一ヶ月前から、みぃちゃんを迎えに来てくれるおうちの人に『たっくんと一緒にいたい』ってみぃちゃんが。そのお願いを聞いて、いつもこの教室で野村さんが来られるまで待ってくれているんです。」 ニコリとオレに目を向ける先生。 野村さん……オレの名前だ。 オレの名は野村和也(かずや)。 ちなみに甥っ子の隆も同じ名字で野村隆。 ……それより…… 「……もしかして、一ヶ月前からずっと?」 父か母かは知らないが、子供のお願いに一ヶ月も付き合っていたのか? 「ええ。いつも本を読んで待ってくれているんです。たっくん、何も言ってませんでした?」 隆のヤロウ……、そんな大事なことを…… そんな話、今初めて聞いた。 みぃちゃんの親御さんに迷惑かけてしまっているんじゃ…… 夕方の六時。 保育園に子供を預けているんだから、おそらく両親ともに共働きしているだろうし、自宅で悠々自適な生活をしている訳ではないはず。 子供を預け仕事へ行き、仕事が終わったら子供を迎えに行き、帰ったら食事や他の家事もあるだろう。 みぃちゃん宅の家庭環境や生活事情なんて知らないが、だいたいどこの家庭もこんなものだろう。 夕方の六時なんて、忙しい時間だろ? のんびり読書して待ってて、後が大変なんじゃないのか? 「すみません。隆、何もそんな大事なことを言ってないから……。親御さんにお礼が言いたいので、待たせてもらってもかまいませんか?」
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