保育園児に先越された

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オレの車で、目的地まで約三十分。 千晶のことを少しでも知りたいと『お互いのこと知らないよね。』なんて自然に話を振ると、『そうですね。』なんて返してくれ、そこから会話もいい感じで盛り上がった。 同じくらいか、年下かなと思っていたら、同い年の二十三歳で『やっぱりな』と思う反面、こんな小さな共通点をうれしいと思ってしまう。 後は、誕生日が七夕であることや、とにかく暇さえあれば読書をしてしまう程本が好きということも聞き出せた。 ……ならば、次は本を探していると口実を作って、二人きりで本屋巡りなんてするのも楽しいかもしれない。 誕生日が来月だし、これはサプライズでプレゼントを用意しないと。 ……本が好きなら、本にまつわる物のほうがいいか? それとも、身につける装飾品のほうがいいか? もっと千晶のことを知ってから決めよう。 千晶の仕事は、病院で介護福祉士として働いている。 髪の毛は病院の規則で肩より長ければ、アップにしなければいけないらしい。 ……それでいつもひとまとめにした肉まんスタイルなんだな。 いつも髪の毛がほつれているのも、介護という仕事を全う(まっとう)した結果なのだろう。 他にはグリンピースが嫌いで、食べないといけないときは息を止めて食べているなんて、かわいい抵抗をしているらしい。 車でのたかが三十分。 千晶とたくさん会話して。 千晶のことをたくさん知れて。 オレは、もっともっと千晶のことが好きになってしまった。
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