保育園児に先越された

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ファミレスに到着し、ふと気がつく。 オレと隆、千晶とみぃちゃんという組み合わせで席に座るのが妥当と思われるが…… それだと、千晶がオレのことを怖がるんじゃ…… 向かい合う形でイスかソファーに座るため、視線を合わすために屈んだりしゃがんだりが難しい。 おそらくテーブルに向かい合わせの距離ならば、怯えきってしまう距離ではないため大丈夫だと思うが…… 間違いなく視線は合わせてもらえないだろう。 隣に座ってもらえれば、少し屈むことで視線を合わせることもできるのに……。 たとえ視線を合わせることができなくとも、隣ならば、体と体との距離でオレとの距離感を意識させられるのに……。 だからといって、強引に子供たちをそっちのけで千晶の隣に座ろうとするのも変な話で……。 なんて色々と考えていたのに、いざ店内に入り、席へ案内され、そうするのが当然というように、隆はみぃちゃんの手を引いて、自分の隣に座らせてしまった。 ……隆ナイス! そうなると、違和感なく自然な形でオレの隣に座った千晶。 車でも助手席に座っていたが、今は明らかに車よりも距離が近い。 そう意識した途端、落ち着きなく騒ぎ始めるオレの心臓。 千晶はさっとメニュー表に手を伸ばし、なんの違和感もなく子供たちの前に広げて置いた。 ……普段からこういうちょっとした気遣いのできる人なんだろうな。 みぃちゃんとアイコンタクトでニコリと微笑む千晶。 どきんっ! おそらく『メニュー表ありがとう』『どういたしまして』というニュアンスのアイコンタクトなのだろうけと…… その表情の柔らかさに、優しさあふれる春の日差しのような笑顔に心が持っていかれる。
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