351人が本棚に入れています
本棚に追加
……待て待てオレ。
……んなことで傷ついてる場合じゃない。
一目惚れした女に、『オレみたいな背の高い男が苦手』なんてオマケがついてただけだ。
それがあったって、オレは彼女のことは好きなんだ。
完全に苦手克服を押し売りしている自覚はあるが、時間がかかったとしても、克服できるよう彼女にオレは協力する。
そして、克服できた時には、オレのことを好きになってもらいたい。
だからこそ今は距離をとられようとも千晶の側に。
苦手が克服できるよう、距離を縮められるよう。
そして、オレのことを意識してもらえるように……。
あっという間だった。
時間は夕方の五時を少し過ぎたところ。
科学博物館を後にして、車へ向かうためゆっくりと駐車場を歩いていく。
目の前には手を繋ぎ、笑顔で歩を進める隆とみぃちゃん。
オレの隣には五十センチ程の距離を開けて歩く千晶。
五十センチ……
近くて遠い。
もどかしい距離。
「……千晶、楽しんでもらえた?」
今日一日の様子から、おそらくオレを見ないだろうと、オレは千晶の横顔を見つめていると……
ゆっくりと千晶がオレに視線を向けた。
…………え?
驚きながら、千晶と視線を合わせたまま惰性で歩くこと数メートル。
「千晶?大丈夫?オレのこと、見てくれるのはうれしいけど、恐くないか?」
頭によぎるのは、以前の怯えきり、震えていた千晶の姿。
驚かせるようなことも、戸惑わせるようなことも言っていないし、千晶との距離については、最新の注意をはらっていた。
最初のコメントを投稿しよう!