保育園児に先越された

8/11
前へ
/77ページ
次へ
……待て待てオレ。 ……んなことで傷ついてる場合じゃない。 一目惚れした女に、『オレみたいな背の高い男が苦手』なんてオマケがついてただけだ。 それがあったって、オレは彼女のことは好きなんだ。 完全に苦手克服を押し売りしている自覚はあるが、時間がかかったとしても、克服できるよう彼女にオレは協力する。 そして、克服できた時には、オレのことを好きになってもらいたい。 だからこそ今は距離をとられようとも千晶の側に。 苦手が克服できるよう、距離を縮められるよう。 そして、オレのことを意識してもらえるように……。 あっという間だった。 時間は夕方の五時を少し過ぎたところ。 科学博物館を後にして、車へ向かうためゆっくりと駐車場を歩いていく。 目の前には手を繋ぎ、笑顔で歩を進める隆とみぃちゃん。 オレの隣には五十センチ程の距離を開けて歩く千晶。 五十センチ…… 近くて遠い。 もどかしい距離。 「……千晶、楽しんでもらえた?」 今日一日の様子から、おそらくオレを見ないだろうと、オレは千晶の横顔を見つめていると…… ゆっくりと千晶がオレに視線を向けた。 …………え? 驚きながら、千晶と視線を合わせたまま惰性で歩くこと数メートル。 「千晶?大丈夫?オレのこと、見てくれるのはうれしいけど、恐くないか?」 頭によぎるのは、以前の怯えきり、震えていた千晶の姿。 驚かせるようなことも、戸惑わせるようなことも言っていないし、千晶との距離については、最新の注意をはらっていた。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

351人が本棚に入れています
本棚に追加