保育園児に先越された

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だから、どうしてオレを見上げたのか……。 「……千晶?」 ずっと千晶と目が合っている。 大丈夫なのか? 怖いんじゃないのか? 怖がらさないよう、このまま少しづつ離れて距離を取ろうとした時だった。 「……今日はありかとう。……ちょっとだけ考えてたの。」 ……なんだ? 少し千晶から感じる雰囲気が、いつもとは違う。 緊張しているような…… 少し硬い雰囲気。 「…ん?」 オレに何かを伝えようとしているのか? 千晶の次の言葉を待っていると、「……あたし……」と小さく口を開いた。 そう呟いて、ふぅ…とひと呼吸。 にこっとオレに、あの柔らかい春の日差しのような笑顔を向けた。 …!! 「あなたのために、苦手克服出来るよう、頑張ろうかなって思ってたの。」 …!? ちょっ……、ちょっと待て…… あなたのために…って…… オレのためってことだよな…? 「千晶、それって……」 オレのこと、特別に思ってくれていると…… 自惚れても………いいのか? 「…?」 不思議そうにしている千晶。 ……なぜ? なぜ不思議そうなんだ? ……オレだけが意識しすぎているのか? 考え込んでしまっていると…… 「みぃちゃん、くるままでかけっこ!」 「うん!じゃあ、いくよー!」 不意に聞こえてきた隆とみぃちゃんの声。 はっと子供たちに目を向けると、すでにかけっこを始め、駆け出している隆とみぃちゃん。 車まであとニ、三十メートルほど。 駐車場に停まっている車の数は少ないが…… さすがに駐車場でかけっこは危ない。
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